#17 佐藤清喜 (microstar, nicely nice)




佐藤清喜(microstar, nicely nice) ayU tokiO 私の5選


恋する団地

元ブリッジの大橋くんからの紹介で本作のマスタリングを依頼され、打ち合わせ(と称して)あゆくんに会った。普段は面識もないまま仕事を受け、何度もやりとりをしていながらまだ実際にお会いした事のない方もたくさんいるのだが(すいません)正直この素敵な音楽を作った若者に興味があった。柔らかい物腰だが武骨、カセットテープやハード録音機器などにこだわり修理までこなす病弱そうな青年が、軽やかなチェンバーポップに乗せて「21世紀の世界はこんなに素敵さ」と歌う。それを聴いて日本の未来も悪くないかもしれないと思った。


air check

はたしてこの若者はエアチェック(死語)した経験があるのだろうかと疑問に思いながら聴いてみると、FM雑誌(死語)を彷彿とさせるようなノスタルジーなど皆無の、切なさ溢れる現代の電波ラブソング(not電波系)だったのだが、それは不思議とおじさんの胸の奥をチクリと刺した。「恋する団地」収録の曲はどれも素晴らしくて、仕事なんだけど無駄にプレイバックして聴き入ってしまう、そんな作品。


犬にしても

なりすレコード平澤氏の要望でメインボーカルをまちこちゃんが担当することに。楽曲の構造は前作とほぼ同じだが、主役が変わる事で青年誌から少女漫画に場所を変えたような新鮮さがあった。あゆ君は自己承認欲が薄いのか、プロデューサー的な資質というか、自身の歌や演奏にこだわらないところがある。その度量の大きさが後の遊撃手における複数ボーカルのアイデアに繋がっていったのだろうと思う。


あさがお

その度量の大きいあゆ君は、自身が録音やミックスをこなすエンジニアであるにも関わらず、他人が好き勝手やったミックスを喜んで受け入れてくれる。僕がやったミックスの中ではこれが一番好き勝手やった曲かなと思うけど、あゆ君はとても喜んでくれた。そのアイデアは全て曲が導いてくれたものだけど、そういう時は本当に嬉しいしやりがいを感じる。


一人暮らし

この曲にはミックスしながらゾクゾクする感覚が何度もあり、それは最後まで続いた。平見君のストイック過ぎるベースに「前世は武士か!」と心の中でツッコミを入れながら、ゾクゾクしたくてまた無駄にプレイバックする。正直この作業を終わらせるのが寂しいとさえ思った。

ハード好きのあゆ君にとって作品作りのきっかけやモチベーションがハードへの興味だったり、若いのにカセットテープでリリースするとか、インタビューでもそういった面を取り上げられがちだけど、SSWとしての資質はもっと語られるべき。こんな曲なかなか書けないよ!



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佐藤さん、いつもありがとうございます。


大橋さんから、彼のやっていたMISOLAというバンドのマスタリングを担当していた佐藤さんを紹介してもらいました。MISOLAのトレインソング大好きです。ライブでやっていたやまがたすみこのカバーも好きだった。

ちなみに大橋さんには今住んでる家を決める時にエアコンを買うお金も出してくれました。

一生忘れません。皆さんのおかげで夏も冬も快適です。家大好きです。エアコン買うお金くれた皆さん大好きです。



「マスタリング」に関して、

僕はいまだによくわからないことが多いんですが、

当時はさらによくわからず、そんな自分をケアしてくれたのが佐藤さんでした。ありがとうございます。


池内亮さんというエンジニアの方一緒に録音〜ミックスを完成させたのち、

それを佐藤さんに聞いてもらって、マスタリングをお願いし、それも完了する頃、ぽろっと「ミックスもやりたかったな」と言ってくれたのが嬉しくて、次はお願いしたいと思いました。


佐藤さんはmicrostarというユニットをやっています。

その活動の仕方は、長い時間をかけて少しずつ自宅でのレコーディングで作品を完成させる、いわゆる「宅レコ」のスタイルです。

佐藤さんはよくmicrostarの音楽のことを「打ち込み」という言葉を使って話をしてくれたのですが、自分のイメージする「打ち込み」の音楽とmicrostarの音楽がどうにも結びつかず、なにがどうなっているのかいろいろと聞かせてもらったりしました。

昔、レコーディングスタジオでのエンジニアの経験もあるというとのことで、

音の質感には常にさりげない気の遣い方で接しているんだと思います。

言われなきゃわからない様な細かい技術を丁寧に使って、普遍的な良い曲を作っているところが好きです。

(プレイリストにmicrostarの曲も入れさせてもらいます。

「夕暮れガール」と「東京の空から」という曲です。)




その後、「犬にしても」のレコーディングでヤマハのデジタルMTR使って録音する時にもスタジオに来てもらってマイクの立て方やルーティングの基本を教わったり、ミックスをしてもらったり、

「新たなる解」作る時にはセルフレコーディングを進めていくにあたって機材のことを教わったり、dawは佐藤さんが使っているからわかんなくなったら色々聞けそうだなとdigital performerというソフトを選んだり、自分の今の音楽制作全般における基礎の段階にそばにいてくれたお師匠さん的な人です。

今でもたまに謎機材系質問を投げてるときありますが、それにもきっちり答えてくれていつも本当に助かってます。



佐藤さんの言葉を受けつつ「恋する団地」を思い返してみます。

いい曲いっぱい。


若い人って色んなことがよくわからないし、憶測で物事を語ります。

そんな先行きの見えづらい未来の中に、何かが光ってるんだと思います。

大人になっていくにつれて、少しづつ憶測だけじゃなく、確からしいものも混ざってきて、その半端さがまた、たまらなくよかったりするかもしれない。


時間が経って、

もう歌えない気持ちもいっぱいあります。

自分も他の人も、バランスは少しずつ変わっていきます。


前に佐藤さんが「エヴァーグリーン」な物について話してくれたことがあります。

それはつまり、上に書いた様な話だったんじゃないかと思うんですけど、

佐藤さんがプレイリストに上げてくれた曲は、あんまり変わらない僕の気持ちが入ったやつばかりな気がして嬉しい。

きっと、作り手としても聞き手としても僕のそういう部分を掬い上げて付き合ってくれていたんだなと思うし、それは本当に嬉しいことだなと思います。



「あさがお」のミックスについて、佐藤さんのしてくれたことはとても大きな気づきになりました。

シンセサイザーの得意な人は音の長さを作るのもやっぱりうまい。

音を作るということは音の質感だけじゃなく、時間もちょっといじってる。

時間の操作で話に緩急を作るということ、それは作品の聞き手の気持ちにも少しタッチしてる。

そんな気がします。

ミックスで積極的に作品に演出を与えるという発見があり、目から鱗でした。(アレンジとは違う)

サウンドプロデュースってこういうことを言うんじゃないかなと思います。


ちなみに「あさがお」は録音とアレンジを繰り返しながら出来上がった通算20パターンくらいの僕のやった仮ミックスがあります。

佐藤さんのミックスはそのどれとも違っていたなと思います。

微妙に自分のボーカルピッチが暗いなーと思うけど、それもまぁ良しと出来たのはやっぱり佐藤さんが最高だったから◎



他にも森さん関係のこととか平澤さんのドネーションCDのこととか、色々思い出あるんですけど本当に長くなるからもうやめときましょう。

今後ともよろしくお願いします!!

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